専門分野

骨盤臓器脱

骨盤臓器脱と尿失禁

近年、膀胱瘤、子宮脱、直腸脱などの「骨盤臓器脱」や「腹圧性尿失禁」などの女性特有の尿路生殖器の病気を専門的に取り扱う女性泌尿器科「ウロギネコロジー」という部門が注目されています。

骨盤臓器脱で実は最も多く下垂してくる臓器は子宮ではなく、膀胱であるために頻尿、排尿困難および尿失禁といった排尿に関する症状が多くみられます。骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁で悩んでいる患者様は極めて多く、以前はあまり有効な治療方法がありませんでした。近年、骨盤臓器脱・尿失禁に対する新たな低侵襲治療の出現により治療可能な病気となりました。骨盤臓器脱には多彩な治療法があります。患者様それぞれに合ったベストの選択肢を提供します。

骨盤臓器脱の保存的治療

骨盤底筋体操・生活指導

骨盤臓器脱予備軍、および軽症の患者様には骨盤底筋体操(PFMT: Pelvic Floor Muscle Training)をご指導いたします。また、排尿トラブルおよび排便トラブルに関しては生活指導をベースに簡単な内服治療でコントロールできるケースもあります。

腟内ペッサリー、腟外ペッサリー

腟の中にリング状の「つっかえ棒」を入れるイメージです。リングは持続的に挿入する方法をとる場合は3~4か月ごとの交換をします。もし、自己着脱可能でしたら、半年ごとの受診で管理できます。ただし、リング不適合(脱落しやすい、腟壁ダメージが強いなど)のケースもありますので、診察にて選択いたします。また、腟外ペッサリーと称して、下着に装着する補正具もあります。

骨盤臓器脱に対する手術方法

① 腟式手術:腟式子宮全摘 腟壁形成

腟から子宮を摘出し、子宮・腟を支える靭帯で補強することで骨盤臓器脱を補正いたします。症例に応じて腟断端(子宮を摘出した後の腟の頂上)を骨盤内の強靭な靭帯に固定する方法もあります(仙棘靭帯固定術)。さらに腟入口および肛門を閉める作用のある筋肉(肛門括約筋)を縫い縮めて補強する方法もあります。

② 腟閉鎖術

性生活の無い方では腟を閉鎖する手術も選択肢に入ります。靭帯の補強を追加したり、子宮全摘と合わせて行ったりする場合があります。

③ 腹腔鏡下仙骨腟固定術

腹腔鏡下仙骨腟固定術(Laparoscopic Sacral Colpopexy, LSC)は腹腔鏡下にポリプロピレンメッシュシートを用いて骨盤臓器脱を治療する方法です。

欧米では骨盤臓器脱の治療のスタンダードとして以前から行われてきた術式ですが国内では先進医療として限られた施設でしか手術を受けることができませんでした。平成26年4月からは健康保険の適応となり、条件を満たした施設では保険診療としてこの手術が行うことができるようになりました。

手術は3時間程度で全身麻酔での手術となります。術後の痛みが少ないのが特徴です。術後性交渉に対してほとんど影響なく、再発率も低い手術です。

④ 腹腔鏡下腟断端挙上術

プラスチックメッシュ手術の適応外の方や、下垂の程度によっては、腹腔鏡で子宮全摘を行った後に、仙骨子宮靭帯で挙上する方法があります(Shull法)。

尿失禁に対する手術療法

尿道スリング手術

女性では尿失禁の保有率が比較的若い年代から増加し、50歳前後ですでに30%にもなります。これは女性骨盤底のゆるみが引き起こす症状です。腹圧性尿失禁は①咳・くしゃみ、②歩行・走行、③スポーツなどで尿が漏れるのが特徴です。

当科では腹圧性尿失禁およびそれを含む混合性尿失禁に対して、適応のある患者様には手術を行っております。ポリプロピレンメッシュのテープで尿道を支える尿道スリング手術が有用です。

手術時間は30分程度で入院期間は4日間前後です。