専門分野
診療概要(女性医学について)
新潟大学産科婦人科では、「女性の一生をトータルでケアする」という女性医学の基本理念のもと、女性ヘルスケア外来を設けて診療しています。
女性の心身はライフステージによって大きく変化します。思春期や更年期などホルモンの不安定な時期はもちろん、妊娠や出産、不妊治療による体調の変化など、心身の不調は女性なら誰しも直面する問題です。これらの症状をトータルでケアできる外来が「女性ヘルスケア外来」です。我々は薬だけに頼りすぎる医療ではなく、患者様に寄り添い、一緒により良い治療を考えることを目標にしています。また、閉経後に増加する骨盤臓器脱や頻尿などの尿路系の疾患、骨粗鬆症の予防と治療など、人生100年時代をより自分らしく、健やかに生きるための医療を提供しています。
日々の体調不良をひとりで悩まず、女性ヘルスケア外来で相談してみませんか?
貴女の10年後・20年後の健康を一緒に作り上げましょう!
思春期~若年期
月経困難症
月経に関連した痛みが軽減できるだけで、勉強や仕事のパフォーマンスも向上します。女性の社会進出が進んだ今、月経痛は現代女性だけではなく、社会全体の課題です。そのため、薬の開発や研究が進んでおり、現在では提案できる治療方法も多くなりました。治療効果も高まっているので、月経に関連した痛みを我慢したり、我慢させたりする時代は終わりに近づいています。ぜひ我慢しないで相談してみてください。
月経前症候群(PMS)または月経前気分不快障害(PMDD)
月経前には卵巣から分泌される2つの女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)がどちらも高い状態になっています。それが急激に減少して出血(月経)が始まります。身体がこのホルモンの変動に対応できず、頭痛やめまい、お腹や乳房の張り、下痢や便秘などの身体症状が出現するのが月経前症候群です。気分の落ち込みやイライラなど、精神の症状が強い場合には月経前気分不快障害と診断される場合もあります。どちらの疾患も、ホルモンの変動を調節することで症状を軽減することができます。また、漢方療法を併用してより自分に合った治療を選択することができます。
無月経(原発性・続発性)および月経不順
満15歳を超えても初経が来ない場合は初経遅延と考えます。まずはお近くの婦人科を受診しましょう。また、一度順調に来ていた月経の周期が不安定になった場合や、3か月以上月経が止まっている場合、逆に2週間以上の出血が続く場合は、どの年代でも早期の受診をお勧めします。一般的な診察で診断がつかない場合や治療に反応しない場合には精密検査が必要です。
性器の異常
先天的な病気が原因で、初経の発来が遅れたり、自分の性に違和感を持っていたりする場合があります。適切な診断と治療で、将来予測される健康リスクを減らすことにつながります。手術を必要とする場合もあり、婦人科医師および泌尿器科や小児外科の医師と連携して診療しています。
詳しくは、「泌尿生殖器疾患チーム」のページをご覧ください。
思春期の心身
思春期は子供から大人に変化する境界の時期で、その発現には個人差があります。体調不良で学校に行けない頻度が増えると、「心」の問題と捉えられる傾向があります。しかし、女性では月経痛が軽減したことで学校に行ける場合や、ホルモンバランスを整えることで、心身の状態が安定することもあります。小児科や精神科の治療と平行して治療が可能ですので、ぜひ相談してください。
妊娠期・産褥期
妊娠期は普段とは異なるホルモン状態に移行します。特に妊娠初期はその変化に心身が対応できず、頭痛やめまい、気分の落ち込みなどの症状が出現します。同様に、産後には妊娠中に高かったホルモンが急激に減少します。そのうえ、育児でのストレスや睡眠不足が重なり、倦怠感やイライラ、不安感などの症状が出やすくなります。まずは担当の産科医に気軽に相談してください。つらい症状が続く場合には女性ヘルスケア外来への紹介をお願いしてみましょう。漢方薬と栄養の指導を主体とした治療で、早期の体調改善を目指します。
プレ更年期~更年期
一般的に更年期とは、閉経を迎える前後の「年代」を指します。日本人女性の平均的な閉経年齢は50歳ですから、その前後5年ずつ、45歳頃から55歳頃までの約10年間が平均的な「更年期」です。しかし、女性ホルモンは、30代後半から徐々に低下し、40歳ではピークの半分ほどに減っています。ですから更年期の手前でも心身の不調が出現しやすくなるのは自然なこと。過度に心配してしまう女性が多い印象ですが、更年期はいずれ訪れる「老年期」に向けて自分の身体を見つめ直し、メンテナンスする時期です。更年期の治療として一般的なホルモン治療は効果的ですが、体のメンテナンスをしない限り、期待した効果は得られず、副作用に悩まされる結果にもなりかねません。我々の外来では、ホルモン療法や漢方療法を組み合わせ、ひとり一人に合わせた治療を提案しています。
更年期~老年期
骨盤臓器脱(POP)とそれに伴う尿失禁や頻尿
尿漏れがあっても、誰にも相談できずに我慢していませんか?原因は骨盤臓器脱かも知れません。中高年女性の2~3人に1人の割合でみられ、誰にでも起こる可能性があります。直接命に関わるような病気ではありませんので、あわてる必要はありませんが、症状が強くなると外出や旅行が億劫になり、楽しみが減ってしまうかも知れません。ぜひお近くの婦人科を受診して前向きに治療してみましょう。手術が必要な場合や治療後も尿や便の状態が安定しない場合には当外来で連携して治療をおこないます。
骨粗鬆症
女性の骨は女性ホルモンの影響を受けています。20代から30代前半は骨を作る細胞が活発に働きますが、女性ホルモンが低下すると徐々に骨を壊す細胞が優位になります。閉経後は女性ホルモンの分泌が停止しますから、徐々に骨がもろくなり、骨粗鬆症へのカウントダウンが始まります。予防する方法はいくつかありますが、重要なのは若いうちに丈夫な骨を作ることです。既に閉経してしまった場合は、ホルモンの補充で骨を壊すスピードを遅くすることができます。ホルモン補充ができない場合には、ビスフォスホネート製剤やビタミンDの補充など、ひとり一人に合った治療法を提案しています。まずは、健康診断などを利用して自分の骨量を調べてみましょう。
がん治療に伴う心身の症状
婦人科がんでは、閉経期前に卵巣を摘出する必要のある病気があります。卵巣を摘出すると、女性ホルモンが産生されず、若くても更年期と同様の症状が現れます。乳がんも、女性ホルモンを抑える治療が必要な場合もあり、同様に身体の不調が現れます。そのような場合に漢方療法が大変役立ちます。また、婦人科関連以外の悪性疾患でも、治療に伴う体力の低下や心身の不調に悩んでいる患者様は多く、当外来では漢方療法を中心に治療をおこなっています。
基礎疾患・合併症のある場合の治療
全身性エリテマトーデス、甲状腺疾患、関節リウマチなど、比較的女性に多い疾患や潰瘍性大腸炎など若年でも発症する疾患があります。女性の場合、基礎疾患の治療中に月経に関連した症状や不調に悩まされることも少なくありません。しかし、副作用の観点から一般的な低容量ピルなどの治療が難しい場合があります。当外来では、体調や服用中の薬に合わせたホルモン療法や漢方療法を検討し、治療をおこなっています。