新潟大学医学部産科婦人科学教室

リプロダクティブ(不妊・不育)

不妊内分泌外来のご案内

当科では人工授精、体外受精・胚移植、顕微授精(精巣内精子を用いた顕微授精)、凍結胚移植などの生殖補助医療技術を提供しております。 不妊治療を受ける際には、どんな原因で妊娠しないのか、どのような治療法があるのかを十分に話し合い、納得のいく方法を選ばせていただいております。

不妊症の基礎知識

一般に、2年間避妊せずに夫婦生活を送っているにもかかわらず妊娠しない状態を不妊症といいます。日本において10組に1組の夫婦があてはまるとされています。
不妊症の原因は多岐にわたっており、複数の原因が重なっている場合もあります。約60%は女性側に、約30%は男性側にあるとされていますが、はっきりとした原因が分からない場合(約10%)も多いです。
夫婦で協力し合ってあせらずに検査や治療を受けることが大切です。

日常生活の心がけ

  1. 趣味や娯楽で積極的にストレス解消を心がけましょう。
  2. 全身の血行がよくなるように心がけましょう。
  3. 体を締め付ける衣装は避け、適度な運動をしましょう。

    ◆女性は冷えすぎ、男性は温めすぎに注意しましょう。

  4. 偏食をしないように心がけ、やせすぎや太りすぎに注意しましょう。

    ◆ホルモンバランスを崩し、卵巣機能低下の原因になります。

  5. 下着は清潔に、入浴は毎日心がけましょう。
  6. 禁煙しましょう。

    ◆タバコに含まれるニコチンは血行障害を引き起こし、妊娠後の流産、早産、胎児発育障害の原因になります。また、男性では精子の異常や勃起障害の原因になります。

妊娠までのプロセス

  1. 卵子が排卵されます
  2. 排卵された卵子が卵管采から卵管に入ります
  3. 精液が膣内に射精されます
  4. 精子が子宮・卵管を通っていき卵子と受精します
  5. 受精卵が子宮内に着床します
  6. 妊娠を維持する黄体ホルモンが分泌されます

どこかのプロセスに問題があると妊娠しません

不妊の原因:排卵障害|卵管因子|男性因子|頚管粘液異常|子宮因子|黄体機能不全|原因不明

1. 排卵障害

卵胞が卵巣内で発育しない、あるいは発育しても排卵しない状態です。
卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体ホルモン(LH)・プロラクチン(PRL)などのホルモン検査により原因を分別します。

【高プロラクチン血症】

プロラクチンという母乳を出す働きを持つホルモンが高いと排卵が抑制されてしまいます。
原因として下垂体腫瘍、薬の影響などがあります。

【卵巣性無月経】

卵巣そのものに問題があり排卵ができない状態です。
ホルモン療法を行いますが、治療効果は高くありません。

【多嚢胞性卵巣症候群】

多くの卵胞が卵巣に生じている状態で、卵巣の表面が硬くなり排卵が障害されます。生理不順の原因になります。

【視床下部—下垂体性無月経】

視床下部や下垂体の異常でFSH・LHが分泌されない状態です。
先天性のもの、ダイエットや精神的な悩みも原因になります。

【無排卵周期症】

月経に似た出血が周期的にありますが、うまく排卵していない状態です。

2. 卵管因子

クラミジア等の感染症や子宮内膜症により卵管が癒着、狭窄、閉塞します。
子宮卵管造影で卵管の通過性や周囲との癒着の状態を検査します。

卵管因子
3. 男性因子

精液検査で精子の数、運動率、奇形率を確認します。

【精子を造る精巣の機能そのものの異常】

原因不明のもの精巣静脈瘤などによるものがあります。

【精子の通り道の異常】

精子が通る管が炎症やヘルニアにより閉塞したり、または先天的に欠損している状態です。

【精液の異常】

精嚢、前立腺に炎症があると細菌により精子の運動が妨害されます。

【性交障害・射精障害】

ストレス、アルコール、栄養障害、糖尿病などの様々な原因があります。

4. 頚管粘液異常

ホルモンバランスの乱れや膣炎などが原因となり、子宮頚管から分泌される粘液が少なくなると、精子が子宮内にうまく入れなくなります。
ヒューナーテスト(性交後試験)で頚管粘液の状態と精子との相性をみます。

5. 子宮因子

子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどによる子宮内腔の凸凹により、受精卵の着床が阻害されます。また、子宮奇形も原因になります。
経腟超音波、MRIにて子宮の状態をみます。

子宮因子
6. 黄体機能不全

排卵後の黄体の働きが悪く、黄体ホルモンが十分に分泌されない状態です。

不妊症の検査

生理の周期にあわせて以下のような検査を行います。

1.基礎ホルモン検査(月経周期3〜5日目)

卵巣ホルモン、下垂体ホルモン、甲状腺ホルモンなどが正常に分泌されているか、血糖が正常であるか調べます。

2.子宮卵管造影検査(月経周期7〜10日目)

X線透視下に子宮に造影剤を注入し、子宮の形態や卵管の通過性を診断します。また、この検査で卵管の通過性がよくなる効果もあります。

子宮卵管造影
3.卵胞測定・ヒューナーテスト(月経周期14日前後)

超音波検査で卵胞、子宮内膜の厚さを確認します。また、おりものと精子の相性をみます。

4.黄体機能検査(高温相5〜7日目)

着床に重要な黄体ホルモンを採血して測定します。

5.クラミジア抗体、抗核抗体検査、精液検査(いつでも)

不妊症の治療法

排卵誘発法

排卵誘発剤には内服薬と注射があります。副作用として多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群があります。

【タイミング法】

超音波検査で卵胞を確認し、排卵日頃に夫婦生活をしていただく方法です。

【人工授精(AIH)】

超音波検査で卵胞を確認し、排卵日頃にご主人の精液から運動性の良好な精子を分離し、直接子宮内に注入する方法です。
男性因子(乏精子症・精子無力症)、頚管粘液の分泌が悪い場合などに行っています。
妊娠率は1回あたり5〜10%で、児に先天異常が多くなることはありません。
排卵誘発剤を使用した場合、多胎率は約5%であると報告されています。

【体外受精・胚移植(IVF-ET)】

自費診療となります。 卵管が閉塞している場合、精子数が著しく少ない場合、他の治療法でなかなか妊娠しない場合に行います。
卵子を取り出して、男性から採取した精子と体外で受精させ、分割した胚を子宮内に戻す方法です。
日本では体外受精・胚移植は結婚しているご夫婦のみに認められています。
(確認のために住民票・戸籍抄本などを提出していただきます)
妊娠率は1回当たり約30%で、児に先天異常が多くなることはありません。
妊娠例の約20%が多胎妊娠になると報告されています。

  • 合併症:卵巣過剰刺激症候群・腹腔内出血・骨盤腹膜炎などを起こすことがあります。
  • 胚盤胞移植:受精後5日まで体外で培養してから子宮内に移植します。
  • 凍結胚移植:受精卵を一旦凍結保存して内膜の状態のいいときに移植します。
受精胚の発生過程
【顕微授精(ICSI)】

自費診療となります。
体外受精・胚移植の応用技術です。運動精子の数が極端に少ない場合、受精障害がある場合に行う方法です。顕微鏡下で極めて細いピペットに使用し、一匹の精子を卵子内へ注入する方法です。

顕微授精(ICSI)

自費診療となります。
体外受精・胚移植の応用技術です。運動精子の数が極端に少ない場合、受精障害がある場合に行う方法です。顕微鏡下で極めて細いピペットに使用し、一匹の精子を卵子内へ注入する方法です。

当科における治療の特色

誘発方法

ホルモンバランス、年齢を考慮した上で、十分な話し合いを行いGnRHアゴニストあるいはGnRHアンタゴニストを使用した誘発を施行しております。また、負担の少ない自然周期での採卵も行っております。

採卵方法

通常は、静脈麻酔により採卵を行っていますが、卵胞数が少ない場合は、坐薬を使用した採卵を行っています。採卵後すぐに帰宅できるため、入院する必要がなく、負担が少ない方法です。

無精子症に対する治療

精路がつまって精液中に精子を射出できない閉塞性無精子症の方に対してはConventional-TESE(精巣内精子回収術)を施行しています。
また、造精機能が著しく低下している非閉塞性無精子症の方に対しは、Micro-dissection TESE(手術顕微鏡下精巣内精子回収術)を積極的に施行しています。
いずれの方法でも精子が採取できた場合顕微授精を行っています。
詳しくは特殊不妊外来(男性不妊外来)を受診ください。

当科における治療成績

年齢とともに妊娠率は低下するといわれています。原因として、年齢とともに卵子も年をとる、着床しにくくなる、排卵しない周期が増えることなどが考えられています。

2014年から2016年までの当科の人工授精の成績
  臨床的妊娠率(周期当たり) 流産率
2016年 9.7%(14/145) 14.3%(2/14)
2015年 6.6%(12/181) 33.3%(4/12)
2014年 3.1%(6/196) 16.7%(1/6)
2014年~2016年 当科での体外受精胚移植の臨床的妊娠率(対移植当たり)
  胚移植全て 新鮮胚移植 凍結胚移植
34歳以下 32.9%(51/155) 31.1%(19/61) 34.0%(32/94)
35-39歳 23.9%(79/330) 16.2%(25/154) 30.7%(54/176)
40歳以上 17.3%(52/301) 10.8%(17/157) 24.3%(35/144)
全年齢 23.2%(182/786) 16.4%(61/372) 29.2%(121/414)
当科におけるConventional-TESEとMicro-dissection TESEの年度別実施件数
精巣内精子回収術(Conventional-TESE、Micro-dissection TESE)の精子獲得率
術前診断で閉塞性無精子症と診断された症例に対して
Conventional-TESEを施行した際の精子獲得率(2006年1月から2016年12月まで)
63/65(精子獲得率 96.9%)
術前診断で非閉塞無精子症と診断された症例に対して
Micro-dissection TESEを施行した際の精子獲得率(2015年8月~2016年12月)
8/15(精子獲得率 53.3%)

不妊治療にかかる費用

検査にかかる費用(3割負担の場合)
  • ホルモン検査 約2,300円
  • 子宮卵管造影 約1,900円
  • ヒューナーテスト 約900円
  • 黄体機能検査 約1,700円
  • クラミジア抗体 約1,300円
  • 自己抗体 約1,300円
  • 精液検査 約440円
  • 超音波検査 約1,600円
排卵誘発剤(3割負担の場合)
  • クロミッド(5日分) 約600円
  • HMG注射(150単位) 約900円
人工授精
  • 10,500円
体外受精・胚移植(全て自費診療)
  • 体外受精前感染症検査 6,370円
  • 体外受精前生化学検査 4,090円
  • 採卵料 54,600円
  • 卵培養料 25,800円
  • 胚盤胞培養料 23,600円
  • 胚移植料 26,300円
  • 受精卵凍結・保管料(2年間) 41,600円
  • 顕微授精料 41,800円
  • 凍結胚融解料 30,200円
  • 精子凍結・保管料(2年間) 24,300円

詳しくは、当科不妊内分泌外来を受診していただき、検査・治療についてのパンフレットをお渡ししてご説明いたします。