新潟大学医学部産科婦人科学教室

婦人科のご案内

腹腔鏡手術について

産婦人科腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術とは、お腹に数カ所の小さな穴をあけ、そこからお腹の中に腹腔鏡(お腹の中をみるための内視鏡)と鉗子(お腹の中で操作するための手術器具)を入れ、モニターをみながら行う手術です。開腹手術とくらべて美容的で痛みが少なく、術後の回復が早いため、早期の退院と社会復帰が可能です。また、腹腔鏡が持つ独特の深部拡大能は、骨盤の手術に向いており、大きな威力を発揮します。当院は腹腔鏡下手術による手術を良性腫瘍のみならず、悪性腫瘍にまで適応を広げております。当院の腹腔下鏡手術の特徴を示しますと以下のようになります。

当院の特徴
腹腔鏡手術とは? 術後の様子 術後入院日数
適応が広がり増加している腹腔鏡下手術

子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、卵巣腫瘍などの良性疾患のほとんどが腹腔鏡下手術の適応となります。良性疾患であっても、お腹の中の状態によっては腹腔鏡下手術ができないこともあるので、外来での診察や検査により腹腔鏡下手術が可能かどうかを検討します。悪性疾患では、保険診療として腹腔鏡下手術を行うことができるのは、現在、初期の子宮体癌に限られています(詳細は子宮体癌をご覧ください)。しかしながら、早期子宮頸がんに対しては、当科において先進医療「腹腔鏡下広汎子宮全摘術」を施行しております。この先進医療は、日本でもごく一部の施設のみが施行可能であり、当科はその施行施設として認定されております。また、当科では産婦人科腹腔鏡下手術の専門資格としての日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡)が4名在籍しております。安全で確実な手術を施行するために、科長および技術認定医が術前に検討会に参加し手術の適応や術式を検討しております。当科では平成28年に計195件の内視鏡手術を実施しました。手術数と主な術式の年次推移は以下となっております。適応は拡大し手術症例は確実に増加しており、腹腔鏡下手術がより身近なものとなっております。

当院の内視鏡手術数の推移
当院の腹腔鏡下子宮体がん手術の推移
腹腔鏡下手術の合併症について

腹腔鏡下手術は、婦人科良性疾患に対して広く行われるようになり、安全性も確立しつつありますが、カメラで見える範囲が限られていること、止血や縫合の操作が開腹手術に比べて難しく時間がかかることから、手術合併症の発生率は開腹手術と比較するとやや多いといわれています。腹腔鏡下手術を行うにあたっては、このような合併症が生じないよう細心の注意をはらって行っていますが、一定の確率で開腹手術への移行や、再手術などの可能性があることをご理解ください。

日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医制度

腹腔鏡下手術は、同じ手術を開腹で行うときとくらべて難易度が高くなり専門性が強まります。このため、日本産科婦人科内視鏡学会が、腹腔鏡下手術に関する専門の技術と知識を持ち、安全に腹腔鏡下手術を行ったり、指導することができる医師を“技術認定医”として認定しています。当科では、全国の大学病院でもかなり多い、4名もの腹腔鏡下手術の技術認定医が在籍し、手術の執刀及び指導を行っています。また、新潟大学病院は、大学病院のみならず新潟県内での技術認定医の育成に励んでおり、県内の腹腔鏡下手術の指導的役割を担っています。

1)腹腔鏡下筋腫核出術

臍部に2cm程の傷をつけて、そこから腹腔鏡というカメラをいれて筋腫をくりぬく手術(核出術)を行っています。他に2~3箇所の1cmほどの小さな傷から、電気メスや超音波メスなどを入れて筋腫をくりぬきます。筋腫のくりぬきから子宮の縫合まですべて腹腔内で行います。くりぬいた筋腫は細かく切断して、傷から体外へ取り出します。筋腫だけをくりぬき、正常な子宮は残りますから、その後の妊娠も可能です。12cm大くらいまでの大きさの筋腫ならこの方法で手術が可能です。ただしすべて体内で手術を行うため、筋腫の大きさが大きい場合や、筋腫の数が多い場合は、出血量が多くなったり、手術時間が長くなったりするため、腹腔鏡下補助下筋腫核出術が行われることがあります。

2)腹腔鏡補助下筋腫核出術

上記の手術の傷に、2~3cmの傷を加えてその傷から筋腫をくりぬきます。筋腫をくりぬいた後の子宮の縫合もその傷から行うことが可能です。傷はやや大きくなりますが、ほとんど目立たず、身体への負担も腹腔鏡下筋腫核出術とほぼ変わりありません。筋腫径が大きく、個数も多いときに行われる手術です。

→腹腔鏡下手術は、手術後5日くらいで退院が可能です。退院後も傷が小さいため、退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。

腹腔鏡下筋腫核出術
腹腔鏡下筋腫核出術
3)腹腔鏡下子宮全摘術

子宮筋腫のみ摘出した際は、子宮筋腫の再発という問題があります。今後、妊娠や出産を希望なされないかたには、子宮を全摘する根治手術が選択されることがあります。腹腔鏡下子宮全摘は、2000gを越える子宮にも適応を拡大しており年々手術件数が増加しております。

2000gを越える子宮に対する腹腔鏡下子宮全摘術
2000gを越える子宮に対する腹腔鏡下子宮全摘術
巨大な子宮 子宮全摘後
巨大な子宮               子宮全摘後
4)子宮鏡下筋腫切除術

子宮の内側に飛び出した筋腫を粘膜下筋腫とよびますが、この粘膜下筋腫は子宮鏡という内視鏡を膣の方から子宮内に挿入して筋腫を削り取る手術が可能です。この手術は、お腹はもちろんどこにも傷をつけずに手術が可能です。また通常は全身麻酔は必要とせず、腰椎麻酔といって、背中から針をさして下半身の痛みをとる局所麻酔にて手術が可能で、腹腔鏡下手術と比較しても術後の回復はさらに早まります。子宮の筋肉の中にできている筋腫には行うことができません。通常は3cmくらいまでの筋腫に対して手術が行われます。粘膜下筋腫でも5~6cm以上になると、一回では取りきれず数回にわけて切除が必要になることがあります。

→子宮鏡下手術は、手術の翌日には退院が可能です。退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。

5)腹腔鏡下子宮体がん手術

2014年4月より早期子宮体がんに対する腹腔鏡下手術が保険適応となり、新潟大学産科婦人科は本手術を実施するに当たっての施設認定を受けております。(手術経験数などの厳しい審査基準をクリアしました。)早期の子宮体がん(がんがまだ子宮をこえて拡がっていない)に対して、腹腔鏡を使って子宮を摘出し、リンパ節を切除する手術(腹腔鏡下子宮体がん根治手術)を行います。がんに対する手術はお腹を大きく切って子宮やリンパ節を摘出する方法(開腹手術)が主流ですが、早期のがんに対しては腹腔鏡を使って開腹手術と同じ手術を行うことが可能です。深部到達能、視野拡大能にすぐれた腹腔鏡手術は、骨盤の深い部位で行う婦人科腫瘍の手術では極めて有効です。当院における開腹手術との比較では、腹腔鏡手術は、手術時間はやや延長しますが、出血量は少なく、入院期間も平均6日と短縮します。再発率、治療効果も劣ることはありません。創が小さいため、術後痛も大変楽であり、また、侵襲が少ないため早い社会復帰だけでなく、高齢の患者様にとっても入院日数が短いことは大変有益な治療法であります。

新潟大学産科婦人科は2008年7月に、日本で初めて腹腔鏡下子宮体がん根治手術の先進医療としての施行を厚生労働省に認められ、保険適応以前から本手術を施行してきた歴史があります。
これまで100例以上に対して手術を施行してきましたが良好な手術成績となっています。年間の症例数についても全国有数となっております。

当院においては、手術適応は科長を含めた検討会で十分な検討を重ねたうえで、さらに手術に際しては、婦人科腫瘍のスペシャリストである日本婦人科腫瘍学会の腫瘍認定医、さらに内視鏡手術のスペシャリストである日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医の両方の資格を持つものが執刀あるいは指導することで、手術の質と安全性を担保しております。

2014年4月より保険適応となり費用の面でも安心できる本手術は、早期子宮体がんの患者様にとって大変有益な治療法となります。詳しくは外来担当医までご相談ください。

6)腹腔鏡下広汎子宮全摘術

2014年12月に厚生労働省が認める先進医療に「早期子宮頸がんに対する腹腔鏡下広汎子宮全摘術」が収載されました。当院でも全国的に数少ない施行施設として認定されていましたが、2018年4月に保険適応となり費用の面でも安心できるようになりました。欧米では、既にロボットや腹腔鏡での広汎子宮全摘が標準治療となっており、本邦でも本治療が標準治療となっていく可能性があります。手術施行に当たっては婦人科腫瘍のスペシャリストである日本婦人科腫瘍学会の腫瘍認定医、さらに内視鏡手術のスペシャリストである日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医の両方の資格を持つものを執刀医とし、手術の質と安全を担保しております。

ただし、保険適応になったばかりであり、まだ腹腔鏡での治療成績などは不明な点がおおいため、当院で手術を受ける症例は腫瘍の大きさなどの条件を満たしている患者様に限らせていただいております。本手術の詳細については新患外来、婦人科再来の担当医までお問い合わせください。